トリッキング練習帳
トリッキングの技と練習法を難易度別にまとめました
トリッキングは、武道の蹴り・体操の宙返り・ブレイクダンスの動きを組み合わせて「技をつなげて魅せる」スポーツです。基礎の蹴り技から上級の多回転技までを帯の色で5段階に分け、練習のポイントをまとめました。
技の難易度の分け方は、プロトリッカーの Sam Kojo Plummer さんが運営する Kojo's Trick Lab(会員制の動画ライブラリ)の分類を参考にさせていただきました。
覚えておきたい用語
トリッキングの用語は英語由来のカタカナがほとんどで、技名もこれらの組み合わせでできています。基本は最初に覚えたい用語、発展は技が増えてきたら覚えたい用語です。
技名の読み方
- 技名の組み立て 基本
- 「踏み切り方+技本体(回転量)+変化+着地」の順に並べて呼びます。例:チート720フック(チートで踏み切り、720回ってフック)、コーク・ハイパー(コークをハイパーで着地)。
- 回転量 360 / 540 / 720 / 900 基本
- トルネード=360°、540キック=540°のように、一般的には踏み込みの回転も含めた合計で名前が付きます。チート720はステップ180°+空中540°です。数字は呼び名としての目安で、実際の空中での回転量とは一致しないことも多くあります。
- ダブル・トリプル・クアッド DOUBLE / TRIPLE / QUAD 基本
- ひねりや回転が2回・3回・4回であることを表します。例:ダブルコーク、トリプルフル、クアッドコーク。略して呼ぶこともあり、カートダブルフルは「カーダブ」と呼ばれます。
- コンボ COMBO 基本
- 複数の技を間を置かずに連続して行うこと。技と技の間のトランジションの質が、コンボの完成度を左右します。
向きと脚の呼び方
- インサイド/アウトサイドの脚 INSIDE / OUTSIDE LEG 基本
- 回転方向を基準にした脚の呼び分け。左回転では右脚がインサイド、左脚がアウトサイドとなり、右回転ではその逆になります。着地スタンスや蹴りの定義に用いられます。
- 進行方向 DOM 発展
- Direction of Movement の略で、コンボ中の移動方向。着地スタンスの向きはこの方向を基準に定義されます。
- フロントサイド/バックサイド FRONTSIDE / BACKSIDE 発展
- 進行方向(DOM)に対して体の正面を向けた姿勢がフロントサイド、背面を向けた姿勢がバックサイドです。
踏み切り方(セットアップ)
- セットアップ SETUP 基本
- 技に入る直前の踏み切りや助走の動作。「セット」とも略されます。
- チート CHEAT 基本
- 技の前に180°振り返るステップ。進行方向に背を向けるように踏み込んでから跳ぶので回転数(角度)を稼げ、トルネードや720・900系の土台になります。また、縦回転系の技で体の軸を真縦から抜いて(傾けて)回ることを指す場合もあります。
- ポップ POP 基本
- 両足で同時に踏み切ること。単体の技名ではポップ360のように両足踏み切りを表し、コンボの中では片足ずつ着地してから両足で踏み切るつなぎを指します。
- スウィングキック SWING KICK 発展
- スウィングスルー(下の「つなぎ方」を参照)の振り脚の推進力を利用して踏み切る、縦回転系の蹴り。スウィング360など。
- スクート SCOOT 基本
- 片膝をつくほど低く構えて片手を床につき、後ろ足で踏み切って180°向きを変えるセット。ゲイナー系やコークのセットとして用いられます。
- Jステップ J-STEP 発展
- 左右交互のステップからスウィングに入るセット。コークなど後方回転系の技の助走に用いられます。
- セットに使う技 CART / TDR 発展
- 側転(カート)やタッチダウンライズ(TDR)は、それ自体が技であると同時に、後続の技の推進力を生むセットとしても用いられます。
着地の形(ランディング)
- コンプリート COMPLETE 基本
- アウトサイドの脚で、ほぼ背中を進行方向に向けて着地する形。多くの技の標準的な着地で、必要な回転量が最も少なくなります。
- ハイパー HYPER 基本
- インサイドの脚で着地する形。コンプリートより多くの回転量を要します。古い使い方では「蹴った脚で着地する」意味もあり、540キックを「トルネード・ハイパー」と呼ぶことがあります。
- メガ MEGA 発展
- アウトサイドの脚で、体の正面を進行方向に向けて着地する形。フロントスウィングへの移行に適しています。
- セミ SEMI 発展
- インサイドの脚で、体の正面を進行方向に向けて着地する形。メガと同様にフロントスウィングへ移行できます。
- ターボ TURBO 発展
- 蹴り技を両足で着地すること(擬似的なスタンスとして扱われます)。例:ポップ360・ターボ。
つなぎ方(トランジション)
- トランジション TRANSITION 基本
- ある技の着地から次の技の踏み切りへの「つなぎ方」。コンボを構成する上での要となる要素です。
- スウィングスルー(スウィング) SWINGTHROUGH 基本
- 片足で着地し、浮いている脚を床につけずに軸足の横を振り抜いて、着地した足で次の技を踏み切るつなぎ。前に振るフロントスウィングと後ろに振るバックスウィングがあり、コークはバックスウィングから入ります。
- パンチ PUNCH 基本
- 両足で着地し、着地の衝撃を吸収せずに即座に両足で踏み切るつなぎ。
- バニッシュ VANISH 基本
- 片足ずつ着地し、着地したのと同じ順番で片足ずつ踏み切るつなぎ。バニッシュ900など技名にも使われます。
- ボンレス BONELESS 発展
- 着地したあと、いったん両足が床に着いてから片足ずつ踏み切るつなぎ。ボンレス・ダブルコークのように、後ろの技の名前の頭に付けて呼ばれることもあります。
- リバーサル REVERSAL 発展
- 片足ずつ着地し、着地と逆の順番で片足ずつ踏み切るつなぎ。
- リダイレクト REDIRECT 発展
- 片足ずつ着地したあと、向きを整える一歩を挟んでから踏み切るつなぎ。
- スキップ SKIP 発展
- バニッシュの間に小さなホップを挟み、両足が同時に接地しないようにしたつなぎ。
- ミスレッグ MISSLEG 発展
- 空中にある脚を着地するかのように床へ振り下ろし、接地させずにその反動で次の踏み切りへつなげる動作。
- ラップ(ラップスルー) WRAP 発展
- アウトサイドの脚を軸足の後方へ巻き込むように振り抜き、インサイド系の宙返りへ移行するつなぎ。スウィングスルーの一種です。
技の系統と回り方
- 縦軸の蹴り VERTICAL KICK 基本
- 体幹を立てたまま縦軸で回転する蹴り技。トルネード、540、チート720などで、「踏み切り方+回転量+最後の蹴り」で名前が付きます。
- 水平軸の技 HORIZONTAL 発展
- 体幹を水平に倒し、水平に近い軸で回転する技。代表例はバタフライキックです。
- 宙返り系 INVERTED 基本
- 回転中に腰が頭より高い位置を通過する技。バック宙やフルのように軸が傾かないもの(オンアクシス)と、コークのように軸が傾くもの(オフアクシス)があります。
- バック宙とゲイナー BACKFLIP / GAINER 基本
- 同じ後ろ向きの宙返りでも、両足で踏み切るのがバック宙やフル、片足で踏み切るのがゲイナーやコークです。
- インバージョン INVERSION 発展
- 宙返り系の技で、体がどれだけ逆さになるかの度合い。同じ技でもインバージョンが変わると見た目も難しさも変わります。
変化形(バリエーション)
- バリエーション VARIATION 基本
- 元になる技に、蹴りや脚の形などの変化を加えたもの。例:フルにラウンドを加えたフル・ラウンド、Bツイストにラウンドを加えたBツイスト・ラウンド。
- ラウンド ROUND 基本
- インサイドの脚で蹴る回し蹴り系の蹴り。Bツイスト・ラウンド、コーク・ラウンドなど。
- フック/ハイパーフック HOOK / HYPERHOOK 基本
- アウトサイドの脚で蹴るフック系の蹴り。ハイパーで着地することが多い蹴りです。
- インサイド/アウトサイドクレセント INSIDE / OUTSIDE CRESCENT 基本
- 脚を伸ばしたまま弧を描いて振る三日月蹴り。一般に、体の外側から内側へ振るものをインサイドクレセント、内側から外側へ振るものをアウトサイドクレセントと呼びます。流派によって呼び方が逆になることがあるため、名前だけでなく脚の振る向きで確認してください。
- スイッチ SWITCH 基本
- 空中で一方の脚がもう一方の脚を追い越し、その脚で着地すること。ゲイナースイッチなど。
- スワイプ SWIPE 発展
- ラウンドを蹴り、その蹴った脚でハイパー着地する変化。
- シュリケン SHURIKEN 発展
- 内側から外側へ脚を振る三日月蹴り(一般にアウトサイドクレセントと呼ばれます)を蹴り、その蹴った脚で着地する変化。
- ナイフ JACKKNIFE / SWIPEKNIFE 発展
- インサイドの脚で蹴った直後に、アウトサイドの脚でハイパーフックを蹴る変化。縦軸の蹴りではジャックナイフ、オフアクシスの技ではスワイプナイフと呼びます。
- ダブルレッグ(パイク) DOUBLELEG / PIKE 発展
- 両脚をそろえたまま、下半身を弧を描くように振り抜く形。カポエイラに由来します。
- シザー SCISSOR 発展
- 宙返りで蹴りと反対方向へ回転しながら、脚を交差させるように入れ替えて蹴る変化。
練習でよく使う言葉
- スポッティング SPOTTING 基本
- 回転中に目線で着地点などの目印をとらえること。体操などでは、補助者が体を支える「補助」の意味でも使われます。
- バトル BATTLE 発展
- 選手が交互に技やコンボを見せ合う、トリッキングの大会形式。
用語の定義は Loopkicks Tricking の Tricktionary などを参考にさせていただきました。トリッキングの用語は地域やコミュニティによって呼び方や意味が少しずつ違うことがあります。
良い蹴りの条件
トリッキングは技を見せる競技のため、蹴りの評価は打撃力ではなく完成度で決まります。主に次の7点で判断されます。初心者は、まず「脚の伸展」と「蹴りのタイミング」を優先して練習します。
- 脚の伸展蹴り脚の膝とつま先が伸び切っていること(エクステンション)。膝やつま先が緩んだ蹴りは、同じ回転量でも完成度が低く見えます。
- 蹴りのタイミング跳躍の最高点、回転が最も安定した局面で蹴りが出ていること。早すぎると回転が止まり、遅すぎると着地動作と重なります。
- キレ抱え込み(チャンバー)→振り出し(スナップ)→引き戻しが速く明確であること。ラウンドは、外側から内側へ脚を振る三日月蹴り(一般にインサイドクレセントと呼ばれます)と軌道が似ているため、腰の返しと膝の抱え込みが入っていないと区別がつかなくなります。
- 蹴りの方向蹴りが目標(ターゲット)に正確に向いていること。目標は通常、進行方向(DOM)に対して直角の向きに置かれます。
- 回転量540やチート720などで、規定の回転を空中で完了してから蹴っていること。上体の傾きや着地の崩れで回転不足を補っていないかが問われます。
- 姿勢と軸蹴り脚以外の脚・腕・上体が締まり、回転軸がぶれていないこと。空中の脚が開いていると、蹴り脚が整っていても全体の完成度が下がります。
- 着地の制御蹴った後の着地を狙ったスタンスで止められること。コンボの中では、着地からそのまま次の技に移行できるかも重要です。
ラウンドキックの動き(3D)
横向きに近い構えから半歩踏み込み、膝を抱え込んでから一気に伸ばして頭の高さを蹴るラウンドキック(回し蹴り)を3Dの棒人間で再現しました。蹴り脚は左右を切り替えられます。視点を自由に回し、一時停止やスライダーで各局面を確認できます。
動きは、実際のラウンドキックを正面(目標の方向)と横の2台のカメラで同時に撮影し、2本の動画のそれぞれで関節の位置を推定してから、2台のカメラの位置と向きを求めて関節の3D位置を割り出したものです。1台の動画では分からない奥行き(脚が目標の方へどれだけ伸びているか、足の前後の位置)も、実際の動きのとおりに再現しています。実際のフォームは流派や目的によって異なります。
後ろ回し蹴り(スピニングフック)の動き(3D)
チートステップで進行方向へ踏み出し、背中側へ1回転しながら脚を頭の高さで振り抜き、かかとで引っかけて当てる後ろ回し蹴り(スピニングフック)を3Dの棒人間で再現しました。蹴り脚は左右を切り替えられます。視点を自由に回し、一時停止やスライダーで各局面を確認できます。
動きは、実際の後ろ回し蹴りの動画(目標の方向から撮影)をコマに分けて姿勢を推定し、動画の人物と重なるように3Dにしたものです。「目標側から」の視点が動画と同じ向きです。脚を頭上まで振り上げる局面は、両脚の開きと股関節の可動域に収まるように、蹴り脚の高さと上体の倒れで補っています。実際のフォームは流派や目的によって異なります。
アウトサイドクレセントキックの動き(3D)
膝を伸ばしたまま、体の内側から外側へ大きな弧を描いて脚を振り上げ、足の外側(小指側)で目標を横から払うアウトサイドクレセントキック(三日月蹴り)を3Dの棒人間で再現しました。蹴り脚は左右を切り替えられます。視点を自由に回し、一時停止やスライダーで各局面を確認できます。
動きは、実際のアウトサイドクレセントキックの動画をコマに分けて姿勢を推定し、動画の人物と重なるように3Dにしたものです。脚を頭上まで振り上げる局面は、股関節の可動域に収まるように上体の倒れと背骨の曲がりで補っています。実際のフォームは流派や目的によって異なります。
トリッキングはACST-BJでも習えます
トリッキングが得意分野のくらと先生が在籍しています。レッスンは個人指導が基本なので、自分のレベルに合った技から、クッション性のある専用スタジオで安全に練習できます。実際の動きを見ながら、踏み切りや回転のクセを一緒に確認していけます。
体験レッスンを予約する トリッキングを習いたい・講師について聞きたいなどのご相談はお問い合わせからどうぞ。トレーニング法
技の習得は「柔軟性」「跳躍力」「技練(反復)」の3本柱で進みます。どれか1つだけが伸びても技は安定しません。
練習の組み立て(1回約90分の例)
| パート | 時間 | 内容 | ねらい |
|---|---|---|---|
| ウォームアップ | 10分 | ジョグ、股関節回し、脚振り(前・横・後)、軽いジャンプ | 体温を上げ、関節の可動域を開く |
| 基礎 | 15分 | 回し蹴り・フック・側転・ポップ360を左右各10本 | 基礎蹴りの精度と回転感覚 |
| 新しい技 | 25分 | 取り組み中の技を分解ドリル→通しで5本×数セット | 疲れる前に新しい動きを覚える |
| コンボ | 15分 | 習得済みの技を2〜3個連続させる(例:540→スウィングスルー→コーク) | つなぎの技術と持久力 |
| 跳躍力 | 10分 | スクワットジャンプ、タックジャンプ、ランジジャンプ | 瞬発力(プライオメトリクス) |
| クールダウン | 15分 | 開脚・前後開脚・腸腰筋などの静的ストレッチ | 柔軟性の向上と回復 |
怪我の予防と恐怖心
- 新技の練習は疲労前に新しい技は練習の前半に行います。疲労でフォームが崩れ始めたら、その日の新技の練習は切り上げます。
- 環境を選ぶフリップ系はマット・トランポリン・芝生から。硬い床で初めての宙返りはしません。
- 分解して覚えるセット→踏み切り→空中→着地を個別に練習し、最後につなげます。
- 撮影して比較する自分の動きをスマホで撮り、手本と同じ角度で見比べると修正点がはっきりします。
- 逆回転も練習する得意な回転方向に偏ると身体の左右差が大きくなるため、基礎蹴りは左右とも練習します。
- 着地を最優先に回転不足のまま無理に着地すると膝・足首を痛めます。足首をひねりそうな場合は無理に立たず、転がって衝撃を逃がします。
技のつながり
矢印は「先に覚えておくと習得しやすい技」を表します。キック系(上)、ツイスト系(中)、フリップ系(下)の3系統に分かれています。左端の色は難易度の帯です。
アクロバット技には怪我のリスクがあります。フリップ系は指導者のいる環境やマットのある場所で練習してください。「できた」のチェックはお使いのブラウザ内にだけ保存されます。